賞与が過去より低い金額となることに問題はあるのか?

賞与が過去より低い金額となることに問題はあるのか?

■ 回答要約
 ボーナス(賞与)の金額が以前と比べて低くなったとしても、それだけで違法となる可能性は低いといえます。

■ お問い合わせ内容
 当社では慣例的に毎年6月と12月にボーナスを支給しています。
 就業規則には、「賞与は、会社の業績等を勘案して支給することがある」旨だけ記載しています。
 実際には、会社の業績によって賞与の原資額を決め、それを各従業員の成績などをもとに配分して具体的なボーナスの額を決めています。
 ただ、毎回、前回あるいは前年より金額が下がった従業員から「納得できない」という声があがります。
 会社としては、ボーナスは支給するかどうかも不確定なものであり、過去の実績は関係ないと考えています。
 過去より低い金額となることに問題はあるのでしょうか。そのほか、ボーナスの査定に関して注意すべき点があれば教えてください。

■ 解説
(1) 賞与とは
 賞与に明確な法律上の定義はありませんが、一般的には、「定期または臨時に、従業員の勤務成績に応じて支払われるもので、支給額があらかじめ確定していないもの」を指します。
 このような賞与には、通常、過去の活躍への褒賞と将来への期待という趣旨が含まれており、基本給や諸手当とは異なります。
 また、勤務成績等に応じて金額が変動し、かつ、支払いのタイミングも毎月ではないところも特徴です。

(2) 賞与に関するルール
 賞与には上記のような特徴があるため、法律の規制がほとんどありません。
 つまり、賞与を支払うかどうか、支払うとしていくら支払うか、どのような基準で支給額を決めるかといったことは、会社が自由に決めて構わないということです。
 そのため、例えば、賞与を毎年支払ってきていた場合でも、「賞与を毎年支払う」ということが就業規則等で明確に決められていない限り、賞与を支払わない年があっても基本的に違法とはなりません。
 また、賞与の金額を決める基準や仕組みを従業員に開示する義務はありませんし、従業員から尋ねられたとしても伝える義務もありません。

(3) ご質問の場合
 このようなルールですので、賞与の金額が過去に支払われたものより低くなっても、それだけで違法とはなりません。
 仮に毎回、前回を上回るように支給されてきたという事実があったとしても、それを継続しなければならないわけではないのです。
 したがって、ご質問の場合も法律的な問題はないと考えられます。一般的な解決方法としては、賞与の仕組みとして前回よりも下回ることがあると説明し、理解を得ることになろうかと思います。

(4) 賞与の査定に関する法律上の注意点
 以上のとおり、賞与の査定に関しては、会社でどのような仕組みにしているかが最も重要です。
 例えば、ご質問の場合とは異なり、賞与の査定方法や考慮要素等を就業規則で決めていれば、それに従って査定を行わなければなりません。
 就業規則に記載していなくとも、事前に従業員に公開している場合も同様でしょう。

 賞与の査定方法や考慮要素を従業員に明らかにすることには、リスクだけでなくメリットもあります。
 そこで示された内容を踏まえて従業員が仕事に励むことによって、高いパフォーマンスを期待できるという点です。
 リスク回避とのバランスを考慮した上で、賞与の査定方法や考慮要素をどうするか、そしてそれをどこまで公開するかといった点を検討することが重要です。

 また、査定方法や考慮要素が会社の自由とはいっても、差別的な内容は許されません。査定方法や考慮要素は差別的でなくても、実際の運用が差別的になっている場合も同様です。
 例えば、女性であることのみを理由として低く査定することは違法となります。また、妊娠や出産、育児を理由とした低査定も許されません。
 賞与といえども、公平に設計・運用することが求められます。

(5) 賞与の査定に関する実際上の注意点
 法律上は問題がない場合でも、実際の査定において課題が出ることがあります。その典型例は、査定をつける者(評価者)によるエラーです。
 例えば、無難に評価しようとしすぎて従業員間で適切な差がつかなかったり、評価者が普段よく接している従業員の評価が高くなったり、反対に低くなったりするといったものです。

 このような評価者エラーは人間の心理的な特徴に由来する部分があり、一概に評価者に問題があるとはいえません。
 むしろ、正しく評価できるように学習や訓練を行うことが必要であり、会社がフォローすべき部分です。
 労力をかけて制度を練り上げても、実際の運用でエラーが出れば、思うような結果とはなりません。

 また、質の高い評価者が制度そのものの問題点に気付くことで、制度の改善にもつながるでしょう。
 賞与を含めた賃金制度は、会社の状況や従業員の変化に合わせて絶えず改善していくことが重要であり、評価者の質はこの点にも直結するといえます。
 評価は現場の上司や管理職が行うことが多く、そういった立場の従業員は、プレイングマネージャーとして自らも多くの仕事を抱えています。
 そのため、査定について学ぶ時間は少ないと思われます。

 ただ、会社の人事戦略を実現するのは現場の管理職であり、役割は非常に重要です。社外の研修に参加させるなど、積極的な工夫が求められます。

記事参照 : F&M CLUB 公式ホームページ 「ご近所さんの相談事例」