アメリカでテーパリングが開始されたけど 何か影響があるの?

アメリカでテーパリングが開始されたけど 何か影響があるの?

■ テーパリングとは?
 11 月 3 日の FOMC (アメリカ連邦公開市場委員会)で、 テーパリングの開始が決定されました。
 現状、アメリカの中央銀行である FRB (連邦準備銀行) は、月額 1200 億ドル (約 13.7 兆円) という巨額の債券購入を行っていますが、
 これを毎月 150 億ドルずつ減らしていき、 来年 6 月には債券購入がゼロにするというものです。
 欧州中央銀行 (ECB) はすでに、今年9月より、テーパリングを開始しています。
 テーパリングとは、 日本銀行など中央銀行が実施してきた量的金融緩和政策を、 段階的に縮小させていくことです。
  量的金融緩和政策は、 具体的には国債や住宅ローン担保証券 (MBS) などリスク性のある金融資産を中央銀行が直接買い入れることで、 市中への資金供給を増やし景気を刺激することを狙うものです。
 金融緩和の縮減を行うというわけですから、 バブルの様相を呈している世界の株式市場を支える異例の金融緩和がいよいよ終焉の時を迎えるわけです。
 この決定を受けてもなお、 アメリカ株式市場は相も変わらず力強い上昇を続けています。
 もっとも、 これはおかしなことではなく、 テーパリングは過度な金融緩和を止めるというだけであって、 金融を引き締めるわけではないのです。
 テーパリングが完了するまでマネーの供給は続き、 完了したとしてもすでにジャブジャブ供給されたマネーは回収されるわけではなく、 そのまま市場に残るからです。

■ 本当の金融引き締めは 「利上げ」
 中央銀行の使命は 「雇用の最大化」 と 「物価の安定」になります。
 2021年末に向けてようやく経済が正常化する兆しが見えてきており、 これらの2つの目標も達成が見えていきている中で、 これ以上金融緩和を継続すると景気が過熱し、 インフレ (物価の高騰) が始まります。
  実際に2021年4月ごろから、 アメリカではガソリンや食料品の値段が急騰しており、 2%程度が理想とされる、 インフレ率が5%を超える水準が現在も続いています。
 「利上げ」 は、 景気の過熱を抑えるために行う金融政策です。 期待を上回るインフレが継続した場合などに利上げが行われます。 逆に景気悪化を防ぐために行われるのが利下げです。
 米国では、 1 回の利上げ (利下げ) は、 ほとんどの場合 0.25%刻みで金利が変更されます。
 また、 次の利上げ (利下げ) を行うタイミングは毎月発表される経済指標などの良し悪しにより変わります。
 今回の利上げの時期については、 米国のインフレがコロナ危機からの回復による一過性のものか、 経済の正常化に伴う継続的なものかの判断により、 最終的にいつ、この利上げを行うのかを決定します。
 目下、 2022年6月ごろの実施の見込みです。
 「利上げ」 は景気を冷ます効果が有るわけですので、急に利上げを行うとせっかく回復してきた経済がまた失速しかねないので、 その事前告知という位置づけでテーパリングを行うわけです。
 一気に金融引き締めを行うのではなく、 徐々に金融引き締めを行っていくのが特徴です。

■ 「利上げ」 が決まっているということは?
◎ 為替に与える影響
 テーパリングが 「利上げ」 の開始の告知ですから、 来年から欧米で利上げが進むことは明らかです。
 こうした国際間の金利の変動がもたらす影響は 「為替」 です。
 短期的な為替相場を予測することは不可能ですが、 長期的に見れば金利の高い国の債権が買われることになりますので、ドルが買われる=ドル高 (円安) になることが想定できます。
 為替相場はすでに、 それを織り込んでいるのでしょう。11月初旬では1米ドル114円となっており、 円安といえる水準です。
 ここで、 日本も 「利上げを実施する」 となれば、円高方向に為替が進むことになります。こうして、 中央銀行の金利政策は為替に影響を及ぼします。
 ただし、 日本はインフレが進んでいるわけではなく、 むしろもっとインフレにしたい (日本銀行も2%程度のインフレを目標としています) 状況なので、 利上げは当面は無いでしょう。
 となると当面は円安基調が続くのではないでしょうか。

◎ 株価に与える影響
 利上げは株式市場にとってはマイナス要因です。 企業の資金調達にかかる金利コストが上昇するので、 その分、企業業績が悪化し、 株式相場の下落要因になると言われます。
 また、 投資家の目線でいえば、 日本の国債のようにゼロ金利では資産運用にはなりませんが、2%~3%という金利獲得が見込めるならば、
 投資する対象として株式の割合を減らし、 債権の割合を増やすとい行動が進むので、これも利上げが株式市場にはマイナス要因と言われる理由です。

■ 世界的インフレと円安が日本の中小企業を直撃?
 OECD (経済協力開発機構) の調べによると、 G20 における今年のインフレ率を 3.7%、 2022 年のインフレ率を3.9%と予想しています。
 主要国で最もインフレ率が高いのは米国であり、 今年 9 月の消費者物価指数 (CPI) は前年同月比で 5.4%も上昇しました。一方で、 日本の物価は停滞が続いています。
 10 月のCPI は+0.2% と前年同期比で微増となったが、 8 月までは前年同月比でマイナスであったことから、 インフレどころかデフレ状態に逆行したといってよいでしょう。
 デフレ基調は給与統計にも表れています。 国税庁の 「令和 2 年分民間給与実態統計調査結果」 によれば、 昨年のわが国における給与の平均は、 前年比マイナス 0.8%となっているので
す。
 世界のインフレ率上昇による円安は、 輸入食料やモノの価格上昇が当面は続くとみられます。 その中で家計は上記のように、 前年より苦しい状態となっています。
 これでは国内消費もあまり期待は出来ない状況です。
 岸田首相は 「所得倍増計画」 を打ち出しました。具体的には、 年末の令和 4 年度税制改正協議において 「所得拡大促進税制」、 通称 「賃上げ税制」 を拡充する見込みです。
 賃上げ税制は、 企業が支払う賃金に対して優遇処置を行うというもので。
 現行制度は、 中小企業が支払う給与総額が前年比 1.5%以上増えた場合、 その増加分の 15%を法人税から差し引くものです。
 その減税率を引上げて、 企業に一層の賃上げを促していこうというのです。
 しかしこの賃上げ税制、 企業側からすれば、 一度基本給を上げてしまえば下げることはしにくく、 一時的な税制優遇策ではなかなか賃上げに踏み切るのは難しいでしょう。
 また、 補助金活用においても賃上げを宣誓しないと利用がしにくい補助金も増えてきています (中には賃上げが出来なかった場合は補助金変換が必要というようなものもあります)。
 来年は、 中小企業経営にとっては、 国内消費の低迷が継続、 材料コスト増加などによる収益性の悪化というリスクをはらんだ年になりそうですので、そのための堅実な経営戦略の構築が重要になりそうです。